QNAP NASのバックアップと同期 NAStoNAS、Rsync、RTRRの使い方
ここではQNAP NASでバックアップと同期を設定する方法を紹介します。なお、QNAP NASの使い方全般についてはQNAP NASの使い方をご覧ください。
QNAP NASの使い方
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QNAP実践活用ガイドブック~クラウド時代のネットワークストレージ活用術
技術評論社 2017/10/20 2160円
海外で定番のNAS「QNAP」の基本から応用までを1冊に!クラウドの浸透により,情報システムの世界が大きく変わりました。ネットワークストレージもその1つです。今では多くの企業がクラウドを活用したITビジネス戦略を採用しています。一方で,企業内システムではクラウドだけで情報を扱えるとは限りません。本書は,クラウド時代に最適なネットワークストレージ活用を目的に,企業内ストレージシステムを対象としたシステム構築・運用について解説します。扱う製品は,欧米での人気を誇り,ここ日本でも数年前からシェアを伸ばしている台湾メーカQNAPの製品群です。目的別・規模別による解説のほか,実際の製品を利用した構築・運用事例まで徹底的に解説します。
もくじ
QNAP NASのバックアップと同期の種類
QNAP NASでは つぎのようなバックアップと同期の種類をサポートしています。 皆さんの環境に合わせて、適切な方式を選択してください。外部バックアップ
NASに直接ケーブルで接続した、USB/eSATAデバイス(ハードディスクやメモリ)へ/からのファイルのコピーです。 EXT3、EXT4、FAT、NTFS、および HFS+ ファイルシステムをサポートします(Windowsでフォーマットしたハードディスクは通常NTFSになります)。 「ワンタッチコピー」を使うと、デバイスをNASに接続すると自動的にコピーを開始できます。 デジカメなどの写真をNASに保存するのにも便利です。
NAStoNAS
世代管理したいファイルをバックアップするのに便利。 指定した間隔ごとに「年月日時分」の名前の付いたフォルダ(バージョンフォルダ)に順次バックアップします。 相手もQNAP製品である必要があります。 QNAP独自のRTRRプロトコルを使います。 このため、相手側でRTRRサーバーの設定が必要。 相手のNASのRTRRサーバーに設定したパスワード(adminやその他ユーザのパスワードとは別)も必要です。 なお、同期方向はローカル(送信側)からリモート(受信側)への一方向同期のみです。
Rsync
UNIXのrsyncプロトコルを使ったフォルダの同期です。一般的なプロトコルを使うため動作が安定しています。 こちらは、相手がrsyncプロトコルをサポートしていれば、QNAP以外のNASやパソコン(UNIX/Linuxマシン)でも構いません。 相手側でrsyncサーバーの設定が必要。 そして相手のNASのユーザ名とパスワードが必要です(そのユーザーにアクセスが許可されたフォルダ/ファイルのみが同期可能)。 なお、同期方向は下記の3方向が可能です。
- ローカル -> リモート : 送り側で同期ジョブを設定・起動する
リモート -> ローカル : 受け側で同期ジョブを設定・起動する- ローカルフォルダからローカルフォルダ(1台のNASの中でバックアップ)、または外部ドライブへ
RTRR(RealTime Remote Replication)
QNAPの独自機能で、一番高機能です。相手もQNAP製品である必要があります。 また、FTPサーバーのフォルダを、FTPプロトコルを使って同期することも可能です。 なお、相手側でRTRRサーバーまたはFTPサーバー(相手側にFTP使用時)の設定が必要(ローカル間の同期では不要)で、 相手のNASのRTRRサーバーに設定したパスワード(adminやその他ユーザのパスワードとは別)も必要です。
バックアップと同期の種類としては、リアルタイムデータ複製、定期データ複製、一方向データ同期および双方向データ同期が可能です。 リアルタイムモードを指定すると、常に対象フォルダが監視され、ファイルの追加・更新が行われると同期が始まります(同期ジョブが常にスタンバイしています)。
いずれも、送り側と受け側の双方ともQNAP製品の場合は、帯域幅制御が可能です。 また同期にサイズ、日付、タイプなど各種条件(フィルタ)を指定可能です。
この他、Amazon S3やGoogle Driveなどのクラウドストレージとの同期や、 Macパソコンの中身をNASにバックアップする“TimeMachine”サーバー機能も準備されています。
またすべてのバックアップと同期のジョブ設定は“Hybrid Backup Sync”というアプリのインターフェースに統一されています。 ごく一部の設定を除いて、どの方式を使っているかをあまり意識しなくても使用できるようになっています。
NAStoNAS | Rsync | RTRR | |
---|---|---|---|
プロトコル | RTRR | Rsync | RTRR |
ポート | 8899(SSL 22) | 873(SSL 22) | 8899(SSL 22) |
相手 | QNAP | Rsyncサーバー | QNAP |
必要なパスワード | RTRRサーバ | 相手に設定したユーザーID | RTRRサーバ |
ジョブ | バックアップ | レプリケーション(同期) | |
一度に同期できるフォルダ数 | 複数 | 1つ | 複数 |
リアルタイムデータ複製 | 不可 | 可 |
バックアップと同期の違い
通常は、バックアップも同期も、自分のファイルと相手のファイルの違いをチェックして、違う場合のみコピーすることを言うことが多いと思います。 しかし、NAStoNASのバックアップの場合は異なります。レプリケーション(同期)
双方で指定したフォルダの中身が同じになるようファイルをコピーします。 サイズ、日付、タイプを条件に、同期対象を選択できます。 なお、暗号化されたレプリケーションは、ユーザー "admin" のみで実施可能です。
バックアップ(NAStoNAS)
一方のNASの指定フォルダを、もう一方のNASに「年月日時分」の名前の付いたフォルダ(バージョンフォルダ)を作り、そこに順次バックアップします。 指定したフォルダ数に達すると、古いバックアップは自動的に削除されます。 いつでも任意のフォルダから過去バージョンが取り出せます。 また、バックアップされた大量のファイルまとめて復元するには「復元ジョブの作成」とその実行で対応します。
各種バックアップ・同期ジョブの設定方法
それでは各バックアップの具体的な設定手順を見ていきます。ジョブのログを確認する
なお、QTS4.xの場合は[システム]-[システムログ]画面を開きます。
ジョブがエラーになる!?
同期・バックアップジョブを使うときは、最初に少量のファイルでしばらく運用してみて、問題ないことを確認してください。 ある程度運用に実績ができたら、そのときはじめて必要なファイルをすべて同期するようにしてください。QNAPのRTRRプロトコルを使う同期ジョブでは、Windowsで作成した日本語ファイル名/フォルダ名において、 コピー先に同じ名前のファイル/フォルダが複数作成される・コピーされるべきファイルがコピーされない・"No such files or directorys"エラーが出てジョブが停止する、などの現象を確認しています。 またこの場合、バックアップ先に削除不能なファイルやフォルダができてしまいます。 このような状況に陥ったら、一旦ハードディスクを取り出して初期化し、QNAPシステムを再構築する必要があります。
このような現象が見られたときは、rsyncプロトコルを使った一方向バックアップを使うか、 BunBackupなどのようなWindowsの日本語ファイルに対応したパソコン上で動作するバックアップソフトを使ってください。