S-II 第二段ロケット
S-II(エス・ツー)が使用されるのは、S-ICの切り離し後6分間です。
この噴射で、アポロ/サターンロケットを高度約20万feet(60km)から約60万6千feet(184km)まで持ち上げます。
- 直径: 33ft (10.06m)
- 高さ: 81ft 7in (24.87m)
- 乾燥重量:95000lb (43.09ton)
- 全重量:1037000lb(470.37ton)
- 製造:ノースアメリカン(North American Rockwell Corp. Space Div. Seal Beach, Calif.)
- 燃焼時間:約6分
- 到達速度:15300mph(24617.7km/h)
- 到達高度:114.5miles(184km)
構造
S-IIは、上から順に、Forward Skirt, LH2 Tank, LOX Tank, Aft Skirt and Thrust Structure, Aft Interstage の5つのユニットより成る。 また、S-IIには5台のJ2エンジン、4台のUllage Rocketが搭載される。
Forward Skirt Assembly
ここには、LH2加圧システムと、テレメトリアンテナおよび各種計測機器が格納されている。 テレメトリシステムは、タンクの圧力、温度、燃料流量、それに機体の振動やノイズ、位置、加速度などを計測する。 テレメトリアンテナはForward Skirtの表面に平らに取り付けられており、無指向性である。
LH2 and LOX Tank Assembly
S-II本体の中央部を占めるのがこの燃料と酸化剤のタンクである。 燃料は260000ガロン(153000ポンド)の華氏-423度のLH2(液体水素)と、 83000ガロン(789000ポンド)の華氏-297度のLOX(液体酸素)である。 この燃料が、S-II全重量の90%以上を占める。 このタンクは軽量アルミ合金で作られ、内部に特別な軽量の断熱材が張られている。 この断熱材は外気温と燃料の、華氏にして500度の温度差を、1.5インチの厚さで遮断している。 上部3/4はLH2タンクで、6つの円筒形のリングを積み重ねて作られている。 下部1/4はLOXタンクで、断面が楕円形の、つぶれた球形をしている。 タンクの外部には上から下まで60feetのSystemsTunnelが取り付けられており、 この中にはForward SkirtとAft Skirtを結ぶ各種電気ケーブルが通っている。
Purge Subsystem
LH2タンクに燃料を入れる前に、タンク内の空気、特に酸素を完全に抜く必要がある。 さもないと、酸素がLH2タンク内で凍り付き、振動を受けるとLH2と反応して爆発する。 そのため、燃料注入前に、酸素がなくなるまで地上施設からヘリウムを注入し抜き取ることを繰り返す。
Fill and Replenish Subsystem
LOX、LH2とも、注入の初期は、タンクが冷えるのを待つため、ゆっくりとしたスピードで注入される。 続いて高速注入が行われ、最後にゆっくりと100%になるまで充填される。 注入か終わると、打ち上げまで(LOXは打ち上げ160秒前、LH2は打ち上げ70秒前)の間、 気化で失われた分をつねに補給し続ける。
- LOX
- 温度:華氏-297度
- 圧力:37-39psia
- LOX燃料注入速度
- タンクの5%まで:500gpm(gallons per minute)
- タンクの98%まで:5000gpm
- タンクの100%まで:0-1000gpm
- LH2
- 温度:華氏-423度
- 圧力:31-33psia
- LH2燃料注入速度
- タンクの5%まで:1000gpm(gallons per minute)
- タンクの98%まで:10000gpm
- タンクの100%まで:0-1000gpm
Venting Subsystem
LOX,LH2各タンクに2個づつ、排気バルブが設けられている。 これは燃料注入時に地上からの信号で開けられ、タンク内で気化したガスを抜くのに使用される。
Pressurization
S-IIの加圧は、打ち上げ前には、地上施設よりヘリウムを注入することにより行われる。 J2エンジンスタート後は、燃料であるLOX,LH2の一部をエンジンの熱で気化して加圧する。
Aft Skirt and Thrust Structure Assembly
ここには5基のJ2エンジンと、これに燃料を供給するfeed line、各種制御用電子機器が取り付けられている。 そしてJ2エンジンの周りには、硬質のヒートシールドが取り付けられている。
Aft Interstage Assembly
これは高さ18feet(約5.5m)、直径33feet(約10m)の円筒形のセミモノコック構造で、 外部に8基(SA-500F,SA-501,SA-502)または4基(SA-503~SA-509)のUllage(アレッジ)ロケットモータを搭載する。 (SA-510以降のミッションでは、Ullageロケットは搭載されなかった。)
[参考]
Ullage(アレッジ)とは、昔のビ-ルの醸造者の専門用語で、タンク内の液体の上部にできるガスがたまった空間のことを指します。 ロケットでは、エンジンスタートの前にこのアレッジモータを噴射して、その反動で燃料をタンクの下部に集め、エンジンに送り込みます。
S-IC切り離し
F1エンジンが停止し、S-ICが切り離されると、まず、Aft Interstageに取り付けられている Ullage(アレッジ)ロケットモータが約4秒間噴射する。 これにより、S-IIのタンク内の燃料が下部に押しつけられ、J2エンジンに送り込まれる。 つづいて、S-IC切り離しの約30秒後、Ullageロケットモータが取り付けられているAft Interstageが切り離される。 このAft Interstageの切り離しは、ロケットが高速で飛行を続ける中、その中にあるJ2エンジンと衝突しないように 行われなければならず、制御には非常な精度が要求される。 Aft InterstageとJ2エンジンの間は、3feet(1m)程度しか隙間がないのである。 この(S-ICとnterstageの)2段階の切り離しのことを、"dual plane separation"と呼んでいる。