S-IB 第一段ロケット
S-IBステージは、サターンI型ブースターのS-Iステージを改良して開発されました。
その重量はS-Iステージに比べて20,000ポンドも削減され、新たに尾翼が取り付けられました。
- 直径: 21.6ft (6.6m)
- 高さ: 80.2ft (24.4m)
- 燃焼時間:約2.5分
- 製造:NASAマーシャル宇宙飛行センターおよびクライスラー
(Marshall Space Flight Center and Chrysler Corporation) - 到達高度:42miles(68km)
Propellant Containers
S-1Bステージの胴体の中心部には直径105インチのLOXタンク(O-C)が搭載されている。 そしてこれを取り囲むように直径70インチの4本の燃料コンテナ(F-1からF-4)と4本のLOX(液体酸素)コンテナ(O-1からO-4)が取り付けられている。 白いタンクがLOXタンク、黒字にUNITED STATESの文字が書かれているのが燃料タンクである。 このタンクは、内部からリングで補強したアルミ合金の円筒形パーツに、上下に半円形のパーツを溶接して一体化したものである。 タンクの厚さは、負荷にあわせて、上部と下部では異なっている。
S-IBの燃料にはRP-1というロケット燃料が使用されている。 各コンテナは、それぞれ一基の内側H-1エンジンと一基の外側H-1エンジンにRP-1およびLOXを供給する。 また、各コンテナには2つのカットオフセンサーが取り付けられていて、 RP-1またはLOXが規定の量より少なくなると内側エンジンを停止させる。 外側エンジンは、内側エンジン停止後約6秒後に自動的に停止する。
各燃料コンテナには15個の個別残量センサと1個の連続残量センサが取り付けられており、 テレメトリを介して飛行中に残量をモニタすることができる。
燃料コンテナは、打ち上げの2分33秒前からヘリウムにより加圧される。 そして飛行中はエンジンの燃料ポンプにより圧力が保たれる。
Spider Beam Unit Assembly
S-IBの上部には、スパイダービームと呼ばれる、蜘蛛の巣を連想させる八角形の骨組みが取り付けられている。 ここには、発射台でS-IVBの固定のためにドリルで穴をあける。
Fire Detection System
8個ずつ4セット、合計32個の温度センサが後部のThrust Structureに取り付けられている。 エンジン点火前に火災が検出されると、打ち上げコントロールセンタに通知され、 冷たいGN2(Gaseous Nitrogen:窒素ガス)がエンジンコンパートメントに噴射される。 もしエンジン噴射中に火災が検出されると、GN2の噴射とともにエンジンが停止される。 GN2の噴射で鎮火しなかったときは、打ち上げコントロールセンタよりWater Quench操作が行われ、水が噴射される。
Range Safety System
米空軍ミサイルテストセンタの安全基準として、液体燃料を使用するミサイルは、 いつでも推力をゼロにし、燃料を放出できるシステムを備えていることが要求されている。 S-IBでは、これを満たすためにRange Safety Systemが搭載されている。 地上から周波数変調されたコマンドを4つの受信アンテナ、2つのコマンド受信機で受信すると、 各コンテナに取り付けられたlinear-shaped chargeに点火され、コンテナが切り裂かれ、ロケットは破壊される。
Electrical System
S-IBには2台の独立した28ボルトのバッテリが搭載されている。 打ち上げ前は、電力はUnmbilicalコネクタを通して、打ち上げ施設から供給される。 エンジン点火の約25秒前に電源がバッテリに切り替えられる。 通常は1台が電源を供給し、異常が発生したらもう1台が肩代わりする。
S-1Bに搭載される多くの計測機器は、5ボルトの電源を使用する。 これは28ボルトの電源を変換して得る。
Control
S-1Bの飛行制御のためのスイッチセレクタが機器コンパートメントNo.2に搭載されている。 これは、各タイミングでIUからデジタルコマンドを受け取り、S-1B内の各機器のON/OFFを行う。 また、2つの加速度計がスパイダービームに搭載されており、横方向の加速を計測する。 そしてこの情報を元に、横風の影響と、構造負荷を最小にするよう飛行経路が制御される。
H-1 Engine
S-IBステージは内側に固定で4基、外側に可動の4基、合計8基のH1エンジンを搭載し、約160万ポンドの出力を発生する。 これはThor/Jupiterミサイルで使用されていたS-3Dエンジンを、ノースアメリカンのロケットダイン部門が改良したものである。 サターンIで使用された初期の出力は165,000ポンドであったが、サターンIBで採用された頃には200,000ポンドとなり、最終的に205,000ポンドまで増強された。