支援船(SM)
支援船(SM:Service Module)は、月旅行全体を通して司令船と宇宙飛行士が必要とする電力、水、酸素、生活環境を供給します。
そして飛行中の姿勢制御を行います。地球と月の間を往復するのに必要な推力も、支援船のSPSエンジンによって得られます。
1960年代当時の日本では、Service Moduleは「機械船」と訳されていました。 当サイトではより原語の持つ意味に近い「支援船」と呼んでいます。
1960年代当時の日本では、Service Moduleは「機械船」と訳されていました。 当サイトではより原語の持つ意味に近い「支援船」と呼んでいます。
- 高さ:24ft 5in (7.4422m)
- 筐体:14ft 8in (4.4704m)
- SPSノズル:9ft 9in (2.9718m)
- 直径:12ft 10in (3.9116m)
- 最大重量:55000lb (24.97ton)
- 製造:ノースアメリカン(North American Rockwell Corp. Space Div., Downey, Calif.)
構造


支援船の筐体はアルミニウムのシートに挟まれたアルミニウムのハニカム構造で作られており、その厚さは約1インチである。 中央に、直径約44インチ(1.11m)の円筒形のCenterSectionが配置され、その周りを扇形をした6つのセクションが取り囲んでいる。 セクタ1と4が内角50度、セクタ2と5が内角70度、セクタ3と6が内角60度となっている。
Center Section
ここには2基の直径40インチの球形ヘリウムタンクと1基のSPSエンジンが格納されている。 ヘリウムタンクはそれぞれ19.6立方フィートのヘリウムを搭載し、その圧力は3600 psiである。 これは、SPSエンジンの酸素タンクと燃料タンクを加圧するのに使用される。この圧力により、燃料はタンクからエンジンに送られる。

Sector 1
アポロ14号まではバランスを取るためのウエイトが搭載されていた。 アポロ15号から17号では、ここはSIM(Scientific Instrumentation Module) Bayとして使用され、 月軌道から月面を探査するための高解像度カメラや放射線測定装置が搭載された。

Sector 2
外部にはRCSエンジンとラジエーターパネルが取り付けられている。 内部にはSPSエンジン用の酸化剤保持タンク(oxidizer sump tank)、RCS燃料タンクとそれらの配管が通っている。 酸化剤保持タンクは高さ153.8インチ、直径51インチのチタニウム製で、13923lbのnitrogen tetroxideを保持できる。
Sector 3
外部にはRCSエンジンとラジエーターパネルが取り付けられている。 内部にはSPSエンジン用の酸化剤タンク(oxidizer tank)、RCS燃料タンクとそれらの配管が通っている。 酸化剤タンクは酸化剤保持タンクよりやや小さく、高さ154.47インチ、直径45インチで、11284lbの酸化剤を搭載する。
Sector 4

低温酸素タンクはセクタの中央部に横並びに搭載されており、低温水素タンクはその下に上下に並べて搭載されている。 これらはいずれも球形で、燃料電池に酸素と水素を供給する。

低温酸素タンクは直径約26インチのInconel(ニッケルと鉄の合金)製である。 326lbの酸素を半液体・半気体の状態で搭載する。
低温水素タンクは直径約31.75インチのチタニウム製で、約29lbの水素を半液体・半気体の状態で搭載する。
アポロ13号が危機的な状況に陥ったのは、ここに搭載されたNo.2低温酸素タンクの爆発による。 このため、アポロ14号以降では、予備の低温酸素タンク1基がsector1に、また燃料電池故障時の予備バッテリ1基がsector4に追加された。

Sector 5
外部にはRCSエンジンと環境制御ラジエーターパネルが取り付けられている。 内部にはSPSエンジン用の燃料保持タンク(fuel sump tank)、RCS燃料タンクとそれらの配管が通っている。 燃料保持タンクはセクタ2の酸化剤保持タンクと同じく高さ153.8インチ、直径51インチのチタニウム製で、 8708lbの燃料(ヒドラジン:窒素と水素の化合物)を搭載できる。
Sector 6
外部にはRCSエンジンと環境制御ラジエーターパネルが取り付けられている。 内部にはSPSエンジン用の燃料タンク(fuel storage tank)、RCS燃料タンクとそれらの配管が通っている。 燃料タンクはセクタ3の酸化剤タンクと同じく高さ154.47インチ、直径45インチで、7058lbの燃料を搭載する。
アンテナ



RCSエンジン


SPSエンジン


SM本体の、司令船と反対側の面には、SPSエンジンを覆うように後部ヒートシールドが取り付けられており、SPSエンジンの噴射熱から支援船を守る。
CMとの接続・切り離し

SMとCMの切り離しは、SMに取り付けられたコントローラーによって自動的に行われる。 切り離し時には、コネクタ類の切断、電気系統の制御の移管、CMとSMを引き離すためのSMのRCSエンジンの噴射が瞬時に行われる。
まず切り離し前に、飛行士はSMの電力を使ってCMのRCSの加圧を行う。 つづいてメインコンソールの2系統の切り離しスイッチのどちらか一方を入れると、切り離しシーケンスが始まる。 最初にCM-SM umbilical内の電気系統がOFFされる。10秒後、CMとSMを結ぶ tension ties が切り離される。 同時に火薬によって動作するステンレスのギロチンカッターにより、CM-SM umbilical内のケーブル・ワイア類が切断される。 さらにSMのRoll-RCSエンジンが5秒間噴射し、SMの飛行コースを変更し、切り離したCMとの衝突を避ける。 最後にSMのスラストエンジンが、燃料がなくなるか電力がなくなるまで噴射し続け、SMはCMから遠ざかっていく。
CSMカラーチャート