S-IC 第一段ロケット
S-IC(エス・ワン・シー)は、その巨体に満たした燃料をたった2分半で使い切り、使命を終えます。
そしてその到達高度は旅客機の巡航高度の約6倍です。
- 直径: 33ft (10.06m)
- 高さ: 138ft (42.06m)
- 乾燥重量:303000lb (137.44ton)
- 全重量:4881000lb(2213.97ton)
- 製造:ボーイング(The Boeing Co. New Orleans)
- 燃焼時間:約2.5分
- 到達速度:6000mph(9654km/h)
- 到達高度:38miles(61.14km)
構造

Forward Skirt Assembly


さらに、ロケットの動きを追跡するためのODOP(Offset Doppler Tracking)システムが搭載されている。 地上からの高周波信号をこのODOPシステムで受信し、また地上に送り返す。 地上局は、周波数のドップラーシフトからロケットの動きを追跡することができる。
またアポロ4、6号のミッションでは、ここに4台のカラーフィルムカメラが搭載され、 飛行中のLOXタンク内部の様子を撮影した。 このカメラとフィルムが格納されたカプセルは、S-IC分離25秒後に切り離され、 パラシュートを開いて着水後、ラジオビーコンの信号を頼りに回収された。

LOX Tank Assembly
ここには、331000ガロン(約1426ton)、華氏-297度のLOX(Liquid Oxygen:液体酸素)が搭載される。 飛行中は5本のLOX suction lineを通して、1秒間に2000ガロン(約19ton)のLOXがF1エンジンに供給される。 このLOX suction lineの上端部にはCut-off sensorが取り付けられており、 これによりLOXがなくなったことが検出されるとエンジンは停止される。
LOXの注入は、タンクの底に設けられた2つのFill & Drainから、タンクの6.5%になるまでは毎分1500ガロンで行われる。 6.5%を越えると、95%に達するまでは毎分10000ガロンで注入される。そして最後に毎分1500ガロンで100%になるまで注入される。

LOXの温度が上昇した場合は、LOX suction line内部にヘリウムの泡を送り込むことで冷却を行う。 また、LOXの加圧には、このヘリウムと、酸素、窒素が使われる。 打ち上げ45秒前に、地上施設から、LOXタンク上部に設けられたGOX(Gaseous Oxygen)distributorに、 圧力が26psiaになるまでヘリウムが注入される。そして飛行中はLOXの一部をエンジンの熱で加熱し、 再度LOXタンクに戻すことにより加圧を行う。
Intertank Assembly
このリング状の構造は、LOX TankとFUEL Tankの間に位置し、この二つを接続する。 ここには整備用のアクセスドアと、umbilical openingと呼ばれる各種コネクタが取り付けられている。 umbilical openingには、非常用のLOX排出口、加圧口、電気コネクタなどが含まれる。

FUEL Tank Assembly
S-ICで使用される燃料は、RP-1と呼ばれるケロシンの一種である。 この燃料タンクには、203000ガロン(約630ton)のRP-1が搭載される。 飛行中は10本のFuel suction line を通して、1秒間に1350ガロン(約4ton)のRP-1がF1エンジンに供給される。 Fuel suction lineには、その中に窒素の泡を発生させるパイプが取り付けられており、 打ち上げ前にこの中の燃料の温度が上がるのを防止している。 またこのタンクの中には、LOXをF1エンジンに送り込むための5本のLOX suction lineが通っている。
燃料の注入は、タンクの底に設けられたFill & Drainから、タンクの10%になるまでは毎分200ガロンで行われる。 10%を越えると、102%に達するまで毎分2000ガロンで注入される。
燃料の加圧は、LOXタンク内に設けられた4本の高圧ボトルから供給されるヘリウムによって行われる。 このヘリウムは一度F1エンジンに送られ加熱される。そして再度燃料タンクに戻り、加圧に使われる。
燃料はまた、飛行中にエンジンの方向を変えるための油圧としても使われる。 飛行中は、燃料が高圧燃料ダクトからサーボアクチュエーターに送られる。
Thrust Structure Assembly


Range Safety System
これは、非常時に地上からのコマンドでエンジンを停止し、燃料タンクを破裂させ、燃料を空中投棄するものである。 地上から正しいコマンドを受信すると、二重化されたSafety Command Receiverがエンジンを停止し、 LOXタンクとFUELタンクに取り付けられたShaped Chargeに点火し、タンクを破裂させる。